パッシブとアクティブ
ベースにはパッシブとアクティブが存在します。
どちらも定番です。
どうしてパッシブもアクティブもそれぞれ人気なのか、
何故に統一された定番にならず2種類共にベーシストから選ばれているのか、
それはベーシストのおかれている音響環境がそうさせているのではないかと思います。
現代のレコーディングやライブでは、ベースはアンプのスピーカーからの出音を直接マイクで拾う『アンプ音』と、マイクを使わずにミキサーに送る『ライン音』の二つを使います。
ライン音はアンプで作り込んだ音とは違い、『素の状態の音』なので、「ライン音を好みの音色に加工したい」と考える人が出てきます。
そこで開発されたのがベース本体にプリアンプを内蔵した『アクティブベース』です。対してプリアンプを内蔵しない従来のスタンダードなベースを『パッシブベース』と呼ぶようになりました。
近年、ライブやレコーディングの現場において、ベースはライン音しか使わないという場合も多々あり、そういった現場で重宝されるアクティブベースが台頭し、これまで使われていたパッシブベースと共に定番になったのです。
パッシブベース
パッシブベースとは、伝統的かつスタンダードな仕様のベースです。
エレキギターと基本構造は似ています。
ピックアップで拾った信号をボリューム、トーンなどで調整します。
プロミュージシャンやコレクターが好んで所有する50年代?60年代のヴィンテージベースは高値で市場に出回っていますが、そのほとんどがパッシブです。
現行品のパッシブベースはヴィンテージのスペックを再現したものがほとんどです。
しかし、近年では独自の概念でパッシブにプライドを持っているメーカーが台頭し、アクティブ全盛の時期に比べてパッシブベースをメインで使うベーシストも増えてきました。
パッシブベースはアクティブベースには出せない音のニュアンスがあり、人により「あたたかい」「柔らかい」「いなたい」「くすんだ」のように表現されます。
しかし、決してアンサンブルに埋もれるようなものではなく、存在感のある、独特な色気のある音だと言えます。
アクティブベースに比べ、使われている木のグレードがそのまま音に反映されやすく、個体差が見えやすいのが特徴です。
出力された信号は『ハイインピーダンス』で、ノイズの影響を受けやすいとされています。
しかし、それがパッシブベース特有の音色ニュアンスの一つの要因であると考えられます。
アクティブベース
柔軟で便利、そういった印象がアクティブベースにはあります。
アクティブベースには音色を加工する為にプリアンプが内蔵されており、電池で駆動します。
アンプやエフェクターを使わずに、ベース本体のみで音色加工が出来るのが最大の利点です。
プリアンプにより、ミキサーに送るライン信号を加工することが出来るほか、様々な現場でアンプヘッドに左右されずに自分の音が出せるのも魅力です。
唯一の欠点は電池が入っていないと音が出ないことです。
ケーブルをジャックに挿しっぱなしにしていると電池が消耗してしまうので、使わない時にはケーブルを抜いておく習慣が必要です。
音の傾向としては、パッシブベースと比べてクッキリとしていて、抜けが良い印象です。
アクティブベースは本体から『ローインピーダンス』の信号を出力する為、どんな機材に接続してもハイ落ち等の劣化が少ないのが特筆すべき点です。
パッシブサーキットとアクティブサーキット
サーキットとは電気回路のことです。
種類によって多少の差はあるものの、パッシブベースの基本構造にプリアンプを搭載したものがアクティブベースです。
アクティブベースの内蔵プリアンプは、低域と高域、モノによっては中域をコントロールして音色を多彩に作ることが出来ます。
メーカーによって各帯域の周波数が違い、一言でアクティブと言っても使い勝手の面からも多岐に渡っています。
プリアンプのイコライザーで細かく音色を調整できる為、トーンのコントロールが付いていないモノがほとんどです。
アクティブベースはイコライザーの分だけパッシブベースに比べてノブの数が多くなる為、スペースの関係で、ジャズベタイプの楽器はピックアップ・バランサーを導入してるものが多いです。
ある一定のグレード以上のアクティブベースには、『アクティブ、パッシブ切り替え』が可能なモノがほとんどで、楽器一本でどちらの利点も得ることが出来ます。
パッシブベースのサーキットは、アクティブに比べてとてもシンプルで、ボリュームとトーンのみで構成されているモノがほとんどです。
そのシンプルな構造に潔さを感じるパッシブベースのファンは多いです。
パッシブとアクティブの見分け方
パッシブベースとアクティブベースは音やサーキットの内部構造、使い勝手などに違いがありますが、初心者が見た目で判別できるような特徴がいくつかあります。
ノブが4つ以上ある。
アクティブベースの場合、プリアンプのイコライザーを可変させる為に、ノブが4つ以上あることが多いです。
それより少なくてもアクティブであることもありますが、ノブが多ければアクティブである可能性が高いです。
これを覚えておくと、楽器店などで一目である程度の目星をつけられるので便利です。
(ジャズベースの2連ノブのように、合計4つでもパッシブということもあるので、あくまで目安として覚えてください。)
ボディ背面に電池ボックスがある。
アクティブベースは電池駆動なので、9V電池を収納する電池ボックスがあります。
ほとんどの場合ボディの背面に設置されているので、これがあったら確実にアクティブです。
ごく稀にボディ前面のピックガードの下に隠れている場合もあるので100%背面にあるとは言い切れませんが、ノブの数に限らず電池ボックスがあるならば、間違いなくアクティブベースといえます。
ベース基礎の『き』
パッシブとアクティブ(画像付き)
シリーズ名で見極める。
新品の場合、各社でパッシブとアクティブでシリーズ名称を変えていることがあります。
例えばFenderでは、シリーズ名に『Standard』が付いていればパッシブ、『Deluxe』と付いていればアクティブです。
名称のルールはメーカーによって様々ですが、知っていると楽器店などのサイトでの検索に便利です。
著者
えんどう光豆