ムスタングベースとは
ムスタングベースとは、レオ・フェンダーがフェンダー社において最後に手がけたエレキベースです。
エレキギターの『ムスタング』モデルのベース版として開発されたもので、ボディの形状やコンセプトが類似しています。
一般的に「ムスタング」と呼ぶとギターをイメージされてしまうので、「ムスタングベース」と略さずに呼ばれることが多いです。
最大の特徴は30インチのショートスケールのネックを採用していることです。
これは、ロングスケールのプレベやジャズベとは一線を画すもので、音も見た目も独特な存在感を有しています。
全体的に小さい楽器なので、小柄な人や、手の小さい人でも比較的演奏しやすいです。
しかし、個人的には「一本目のベース」としてはあまりオススメしません。理由は、音が独特なので、どんな音楽にもマッチするような存在とはいい難い部分があるからです。
個性を求めたり、楽曲に合っていたり、見た目がめちゃくちゃ好みだったり、そんな理由で選ぶならば心から愛せる楽器だと思います。
ピックアップについて
ムスタングベースのピックアップは『スプリットコイル・ピックアップ』と呼ばれ、2つのピックアップがZ字に配置されている形状です。
スプリットコイル・ピックアップは2つのピックアップが《1弦2弦》《3弦4弦》をそれぞれ担当し、役割が重複していない為に2つで「1個」とカウントします。
これは、プレシジョンベースに搭載されているモノと同じ構造ですが、サイズがムスタングベース用に作られているので、大きさに違いがあります。
その為、スプリットコイル・ピックアップといっても、ムスタングベースのピックアップとプレベのピックアップを交換して換装することは不可能です。
音の傾向
ムスタングベースはショートスケールでボディも小ぶりな為、一般的なロングスケールのエレキベースと比べ、迫力のある低音はあまり期待できません。
しかし、低音がスッキリしている分、音抜けが良く気持ちの良い中音域が特徴だと言えます。
スプリットコイル・ピックアップが搭載されている為、使い勝手はプレベに近く、トーンを絞ってモコモコさせても面白いです。
ゴリとかバキとかそういう音を出す楽器ではないです。
音抜けの良さを生かしたベースソロや、歪みエフェクターとの相性は良いと思います。
発想次第ではかなり面白い存在になり得るでしょう。
見た目の特徴
ムスタングベースの一番の特徴はざっくり言うと「小さい」とこです。ショートスケールのネック、小さいボディが採用されていますが、全体的にバランス良く小さい為、単体で見るとサイズに違和感があまりないです。
楽器店などでは他のベースと比べると小ささが顕著なのでわかり易いです。
フェンダー社の楽器なので、見た目はフェンダー感で溢れています。
ボディはギター『ムスタング』の形状が採用されています。
ピックアップやサーキット部のパネルなどの形状はジャズベ的ですが、小さいスプリットコイル・ピックアップが異彩を放っています。
プレベと同様に1ボリューム、1トーンで構成されているので、ノブの数は2つです。
ムスタングベースにはボディに斜めのストライプ模様が施されているモノをよく見かけます。
ごく稀にプレベやジャズベにも斜めストライプ入りのモノがありますが、「ストライプといえばムスタング」と言いたくなるほどイメージとしては強いです。
ミュージックマスターベース、ブロンコベースとは
ムスタングベースと同じ形状のボディ、ネックが採用された2つの機種が存在していました。
『ミュージックマスターベース』と『ブロンコベース』の2機種で、スチューデントモデル(練習用)として発売されました。
特徴はムスタングがスプリットコイル・ピックアップが搭載されているのに対し、シングルコイル・ピックアップが1つ搭載されていることです。
その為、音はムスタングと比べてさらに音抜けが良い印象です。
この2機種の見分け方はピックガードの形状です。一弦側の肩の角が丸ければミュージックマスターベースで、尖っていればブロンコベースです。
ムスタングとは違い、サーキット部までピックガードで覆われていてプレベ的です。
音は全体的な構成が酷似している為とても似ています。
現在ではブロンコベースのみフェンダーの下位ブランド『スクワイア』から発売しています。